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お知らせ高等学校

生徒・保護者の皆様へのメッセージ(4)

「何のために学ぶのか(1)」
今年度、残念ながら1年生の生徒研修は実施されませんでしたが、そのプログラムの1つに外部講師を呼んでの講演があります。そのテーマは、「なぜ学ぶのか」「何のために学ぶのか」ということだったと思います。誰もが何度か考えることです。特に現在、休校が長引く中、皆さんは、学校そして学ぶことの意味や意義をこれほど考えた時はなかったと思います。その問いに対する答えを私もいろいろと考えてみました。そして、1番に頭に思い浮かんだことは、以前、本学園の中学生に読ませたことのある新聞記事でした。まずは、今回、その記事を紹介します。ある女性の話です。
「東京都立飛鳥高校で9日行われた定時制の入学式。新入生の中に1人のかくしゃくとした高齢者の女性の姿があった。昭和6年生まれ。81歳で高校に入学する。都の教育委員会でも『これほど高齢の新入生は珍しい』と驚いている。故郷・栃木県で国民学校初等科を卒業後、高等科に進学したが、時まさに戦争のまっただ中、家事や畑仕事を優先させるため、1年で辞めざるを得なかった。27歳で結婚、30代後半からは給食の調理師を務め、共働きで3人の子供を大学に行かせた。だが、子供たちに勉強を教えられなかった。町内会などの会合でも、気後れして発言は控えがちだった。通信教育も考えたが、『基礎ができていない自分には無理』と諦めた。
それでも『人生に悔いを残したくない』と、78歳で地元の埼玉県川口市役所に相談。学ぶ意欲のある人材を受け入れる『夜間学級』を知った。バスとJR、都電を乗り継ぎ片道2時間かけて東京都荒川区内の中学校に毎日通った。
英語のアルファベット。掛け算に割り算。何もかもが未知の世界だったが、分かること、できることの喜びをあらためて知った。『一つずつできるようになるのが、嬉しかった。勉強に欲張りになった』と高校進学を決意した。
『学べるというのは本当に幸せなこと。勉強が難しくなるので不安もあるけれど、今は楽しみの方が大きい』『同じクラスに外国の方もいるので仲良くやっていきたい』入学式の後、81歳の高校生は、こう言って目を輝かせた。」
分かるようになること、できるようになること、シンプルにそれが嬉しい、そういった気持ちを持ったことは、皆さんにも必ずあるはずです。そうした純粋に「学ぶ」ことに対して喜びを持つこと、これがやはり「学び」の原点なのでしょう。また、この方の例だけではなく、現在でも世界には貧困や国の情勢等で学びたくても学べない人たちも大勢います。今は、誰もが多かれ少なかれ感じたと思われる気持ち、「学べることの幸せ」を皆さんにあらためて考えてほしいと思うのです。

 

校長 青木一男