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生徒・保護者の皆様へのメッセージ(5)

【何のために学ぶのか(2)】

 「何のために学ぶのか」、その問いに対して、多くの人が、「一生懸命に勉強することによって将来、就きたい職業に就くことができるから」、「自分の夢を叶えるため」などと答えるでしょう。つまり、「なりたい自分になるために学ぶ」ということです。そして、今の皆さんにとって、「自分の目標を達成するためには、例えば、この大学、この学部・学科に入らなければならない。または、入った方が達成しやすい。よって今、しっかり勉強しておかなければならない。まだ、誰もが何にでもなれる可能性を持っている。それは勉強次第、努力次第」ということなのです。そのことに関しては、誰もが理解し、納得していることでしょう。しかし、何を目標にしたらよいか、自分は何になりたいのかが分からず、悩んでいる人もいるかと思います。

 そこで、「なぜ学ぶか」、「何のために学ぶのか」について、もう1つ皆さんに考えてほしいことがあるのです。以前、私がある研修会に参加した時のことでした。北海道のある私立学校の校長先生から聴いた話が、とても印象に残っているのです。今回はその話を皆さんに紹介します。

その学校のある女子生徒が、ベトナムへ研修に行った時の話です。彼女はベトナムのある街の病院を見学するのですが、小児病棟で腕に赤のインクで印がついている子と青の印の子がいることに気がつきました。よく見てみると、赤の印のついた子のほ乳瓶のミルクは薄く透き通っており、青の子のほ乳瓶のミルクはとても濃いのです。引率の先生に、なぜこのような違いがあるのかを訊ねました。すると、赤の子は命が助からない子、青の子は助かる可能性のある子だという答えが返ってきたのです。その生徒は、「なぜ、そう分け隔てするのですか。命は平等じゃないんですか」と泣いて抗議しました。しかし、言われたのは、「全員を助けようとすると、助かる子も助からなくなる」ということでした。

 「仕方ない」という先生の言葉に納得できず、その時、彼女はこう言うのです。「私、勉強します。勉強して医者になってこの問題を解決します」と。これはもう自分のための勉強というものではなく、「人を助けたい」という人のための勉強であり、その強い思いが、彼女を「学び」へと駆り立てたのです。彼女は、生まれて初めて心から勉強したいと思いました。そして、そこから必死になって勉強し、大学の医学部に入り、医者になったのです。

人は助け合わなければ生きていけません。衣食住も誰かが作っているものの上に成り立っています。ですから、皆さんにも将来、誰かのために役に立つ人、社会に貢献できる人になってほしいのです。自己実現の先に、そうした「他のために」ということを考えて、皆が学び、成長していくことで、幸せな世界を築くことができるのでしょう。まずは、毎日学校へ通わせてくれている家族が、頑張っている姿を見て喜ぶ、安心する、そこから始めてもよいのではないでしょうか。「他のために」、それこそが、「何のために学ぶのか」の大切な答えの1つなのです。

 

校長 青木一男

 

《バックナンバー》

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